【今年1番がんばったこと = 今年1番の大失敗】

【今年1番がんばったこと = 今年1番の大失敗】
 
今年1番がんばったことを財団から聞かれたが、思い浮かばずに回答を放置していた。私が手を出したことは多岐にわたるので、一口にはいえない。だから、放置し続けた。
 
そのまま数週間が経ち、ふと思い出して考えなおし、下記のとおりに回答した。
 
今年1番頑張ったことは、中東研究で、専門家複数人と議論し、研究や勉強の計画を立て、それを着実に実行してきた。しかし、奨学金獲得に失敗したために、中東研究を諦め、違う分野で社会の役に立つ道の模索を始めた。」
 
「中東研究」を1番がんばったのだろうと思った。昨年末から先生と議論を始め、今年明けには会ったことのない先生とメールで議論し、さらには3ヶ月間、専門家にへばりついて情報を収集し、毎日ニュースをチェックし、書籍にも投資をした。中東研究をするがために英語力UPにも力を入れた。大使館へも行った。インターンシップのアプローチもした。
 
もう思いつくことは全部やった。それは奨学金を得るためである。奨学金を得られなければ留学に行けない。そして、卒業できないから、ここまでやった。
 
そして、奨学金を得るためには、その志が「ホンモノ」でなければならない。何故か? それは、「ホンモノ」の言葉しか、相手の心にグサリと突き刺さらないからである。
 
面接で、相手を口説き落とす材料を用意しておくためにも、私はネタ仕込みをした。つまり、専門家と会い、情報を得て、毎日勉強しているということをアピールすることである。
 
でも、その一方で、本当は中東の研究をやる覚悟ができていないというか、自分にその能力があるかも分からない、むしろ、能力がないとさえ思う。そもそも、この目標にしたのは、奨学金を申し込むためである。だから自分に、この目標がホンモノであることを言い聞かせるために、ここまで準備し、精神を中東に集中させたのかもしれない。というのも、この道というのは本当に厳しい道で、問題そのものが複雑で大規模であり、人生の他のことを捨ててでもやる覚悟が必要である。それに、大多数の人が死に続けている事実と向き合うためには、非常に強い精神がいるのである。
 
経産省と企業が支援する奨学金なので、なかなか解決せず目に見えた成果がすぐに現れないこの問題が、スポンサーからは好かれないだろうということは、応募の時点で分かっていることだった。
 
でも、私は奨学金に応募するのであれば、テーマ以前に、ニセモノの言葉や態度が通用しないことは分かっていたので、自分が当時しっかりと向き合えた中東にテーマを設定したのである。
 
 
計画書は文句の付け所がなかったようではある。ところが、結局奨学金は得られなかった。大企業の人事部の視点が「日本の利益」という枠内にしかないことに非常にショックを受けたが、まぁ人の視野なんてのは、そんなものである。
 
まぁ、自分の言葉が相手の感性にまったく響かない現象は多々あるので、別に驚くことはない。
 
一方で、視野が日本という枠を飛び出て、世界や自然、そして人間にまで及んでいる企業や人もいるということを、他の奨学会を通じて知り、救われた心持ちがした。
 
どちらがいいかというと、まぁ持続可能なものは視点が広い方ではあるが、立場や状況によっては、自分や国の利益のことを第一に考えることも必要であるから、どちらも必要な考えである。
 
 
失敗しようと「全部パー」とは決して思わないのが、私である。
この計画書を作る過程で、私は多くの人から多くを学び、そして関係を深めてきたからである。だから、応募して良かったと心底思っている。
人生、無駄なことはない。
 
ただ、誰にも頼れないので、何が何でもこの奨学金を得なければと思っていた。でも、留学先をマレーシアにしたことで道が開けた。
この失敗は、案外大したことがなかったなと思った。
 
恐らく、奨学金が得られたら、この高い目標を達成するために無理を重ね、私のカラダは破壊しただろうとさえ思う。それに、この奨学金が得られなかったから防災や子どもの貧困や貿易について、そして、自分自身について考える時間を得られたのだと思う。
 
奨学金に落ちたお陰で、マレーシアと運命的な出会いを果たしたと思い込む辺りが、私の天才的なポジティブ思考である。