男前恐怖症。

私は男前が苦手である。
これは、相手のせいではない。私がブサイクだということを強く自覚させられるのが嫌なだけである。並ぶと、自分がブサイクだと言われているような気持ちになる。それでも、最近はしょうがないと思えるようにもなっただけ大人である。
 
男前というのは意外とたくさんいるけれども、自分で自分のことを「男前だ」と思い自惚れている人はめったにないということに気がついた。少なくとも、私の周りはそうである。いたとしても、10代〜20代前半である。というのも、社会に出ると、男前かどうかだけでは浮かれていられなくなるから、容姿だけを武器にはできないからなのか?
 
非常に多くの人が男前だと言う先生がいる。でも、私は何故ここまで男前だと言われるのかがよく分からない。先生には悪いが、本当によく分からない。そこで、私は先生の顔立ちを観察することにした。なぜここまで男前だと言われるのか? その問いに答えるために顔立ちをじっくりと観察した。ところが、この先生はトップレベルのツンデレである。いや、デレない。ひたすらツンツンとしている。それどころか、私に対しては爆弾を投げつけてくる。爆弾というのは、甚だ厳しい言葉ー過剰過ぎるほどに厳しい言葉を、ものすごい勢いで浴びせてくるということである。爆弾を投げつけられることは、私の場合はよくあるので、それはいいのだけれども、この先生はその中でもトップ1・2に入る。まぁ爆弾と言っても、優しさを爆弾というものに包んでいるだけであるが。
 
それで、この人が男前かどうかの結論であるが、男前かどうかの判断がし兼ねるくらいにコワイという結論が出た。だって、何を言っても笑ってはくれないのである。ツンデレはよくいるが、ここまで笑わないツンデレは、ここ数年で二人しか知らない。いくらクセモノであっても、多少は笑う。
 
家にあった焼酎を片づけるためにあげたときだけ、この方はニコリと笑ったが(この笑顔は礼を尽くすという意味で笑ったのだろうと思う)、その笑顔があってもコワイという印象は拭えない。
 
私のことが嫌いではないから、配慮を爆弾で包んで投げてくるのだろうかとは思うが、ここまでになると嫌われているのだろうという疑いを100%拭うことは不可能に近い。1%以上は嫌われているだろうなと思ってしまう。
 
話がだいぶ逸れた。
私はこの人が男前だと言われているから、それについてどう思うかいつか聞きたいと思いながら、恐怖感が勝って何も聞けない。
 
だって、この先生が優しいと他人が言っていたと一言伝えるだけで怒るのである。
「あのさ、何か勘違いしてない? 俺、厳しいんだけど」それを聞いて鳥肌が立った。
 
そのため、この人の人物像を元に想像で会話をしてみようと思う。
「先生は多くの人から男前だと言われていますが、どう思われますか?」
「は? 何言ってんの?」ああ、これ以上の会話は想像できない。
 
 
もう一人男前だと言われている人がいる。
これは男前ではあるなと客観的に見て思った。男前だから授業を取ったわけではなく、オムニバス形式の授業で必ずこの人が出てくるから仕方なく取る形となった。オムニバス形式なので、ひと月我慢すれば終わる。
 
ここで「ガマン」という言葉が出た理由は、この先生の授業が甚だ嫌いなのである。人はとてもいい。素直な感じで話しやすい。そうは言っても、彼の授業が死ぬほど嫌いなのである。彼の出すテストは、またなおさら嫌いである。何故かと言うと、とにかく動画や映画を見せるのが大好きだからだ。数十分じゃなく、何時間も見せられる。授業をしたかと思えば、本の引用を大量に行う。それだけならいいが、本のタイトルと著者名をテストに出してくるから悪質である。
 
あそこまで男前だと言われるから、私も劣等感を抱いてしまうのではないかと不安に思ったが、その必要性は一切なかった。それどころか、この苦痛の何時間を耐え抜く方に懸命だったからである。
 
もちろん、彼の授業が嫌いなのは私の性質なだけであって、この人の授業が好きな人もいるだろう。でも、死んでもこの人の授業を4か月間受けるという選択は取らないだろうと思う。
 
 
逆に、とても男前とはほど遠い先生が人気者らしい。どう転んでも、どうお世辞を言っても男前だとは言えないのである。
 
ところが、とても美人な女性が「あの先生、かわいいの」とハートマークがつきそうな勢いで言う。しかも、話をそのまま聞くと、その先生は女性に人気で、クラスに女性がたくさんいるようである。アドバイザーの登録もできないくらいに人気なのである。
 
ただ、本人は女性を口説こうという性質でもないし、遊び人でもない。
 
この先生が非常に優秀で、授業もおもしろく、学生ともよく議論をする熱心な先生だということくらいは、授業を取ったことがない私でも感づいている。しかし、優秀だというだけでは説明がつかないと思う。
 
その美人女性に話を聞くと「話し方がかわいい」と言う。このかわいいと言うのは、色っぽいかわいいではない気がする。
 
ちなみに、私はこの先生の授業を取るつもりはない。なぜなら、課題量が多そうで厳しそうだからである。私は自分の性質を考えて、ああいう重い授業は正規学生としては取らないと決めた。理由は、健康のため、奨学金や就活などの人生プランのためである。私は親を一切頼れないので、ここまで考えて戦略的に動かなくてはならないからだ。