好きとか告白とか。

おもしろいことを思い出した。
小学生のときの話である。
 
私は転校し、まったく違う県に行った。
人見知りで、しかも同級生と遊ぶ習慣のなかった私は(私の遊び相手はいつも10歳以上離れた人ばかりであった)友達ができなかった。もう一人の転校生はすぐに友達ができて人気者なのに羨ましいなと思った。
 
それで、私は隣の男の子と仲良くしていた。気さくで話しやすかったからである。友達がいないので、その人と同じクラブに入った。異性として好きだとかそういう感情はなかった。
 
ところが、他の男の子に「お前は、あの子が好きなんだろう!」とからかわれてしまい、それから、その隣の男の子は良い人なのだけれども、私は素っ気なくするようになった。
 
 
私は他に好きな男の子がいた。
だけれども、今度はその男の子が私にこう言った。
 
「お前は、○○くん(また別の子)のことが好きなんだろう!」だから、私はこの人にお手紙を書いた。
 
「私が好きなのは、○○くんではなくって、あなたですよ」と。ところが、それ以来、その男の子から避けられるようになった。一度二人きりになったときに、お互いにものすごく照れている感じがした。
 
 
「お前は、相手をイジメっ子にするというか、不器用にさせる要素を持っているんじゃないか?」とクソジジイに言われたことがある。思い返してみれば、私はけっこうイジメられる。そして、告白される際は、非常に不器用な形を取ることが多い。
 
一度目は、学校の階段で「好きだ」と叫びながら、相手が走り去ってゆく。そして、少し進んだところでこちらをチラと一瞬だけ振り向く。頬が赤い。私は唖然とした。というか、それではこちらは反応のしようがなく、相手は何がしたかったのだろうかとワケが分からなくなった。そうして考えた結果、私はどう客観的に見ても美しくはないので、こういう現象が起こること事態があり得ない。そのために、「今のは幻」という結論に至った。私はこの人のことが好きであったが、それだけに「これはきっと幻であろう」と思い、そのまま何もなく、この人と話すことなく私は転校した。
 
二度目は、電話であった。家に電話がかかってきたので、電話を取ったら「好きだ!」とだけ言って電話を切られた。これではますます困惑するばかりで、相手の意図がまったく分からない。というか、相手が誰とも分からないので、こちらは反応のしようがない。イタズラ電話だろうと思った。それで、直後にまた電話が鳴ったので、「ばかやろーー!」と言って電話を切った。イタズラ電話だと思ったので、そう返したのである。これが本気の電話であったなら、この人はどう思ったのだろうか。まぁイヤな女と思って嫌いになったかもしれない。
 
 
まぁ子どもの好きなどと言うのは結構いい加減なものである。すぐに気持ちがコロコロと変わる。
それに、意外と相手に伝えていないことが多いのかもしれないと思った。10年以上経ってから「あのときは・・・」と言われたことがあって、驚いたことがある。その素振りさえ見せなかった人なので、この人は嘘をついているんじゃなかろうかと疑ったが、私に嘘をつく理由は一切見当たらないので、嘘ではないだろう。
 
かくいう私も自分の気持ちを隠すタイプで、前に進めない人間である。
「お前、両想いでも不器用過ぎるために結ばれない男女は世の中にゴマンといるんだぞ。お前のそういう性格は本当に良くない」とクソジジイに注意されたことがある。