柔らかな笑い声と、慎重な男の子。

私が受講しているクラスに、目の見えない人がいる。からだの全てが目の代わりを果たしているからか、いつも周りに注意を払っていて、慎重そうな雰囲気を持っている人であった。でも、表情は穏やかで、優しそうな空気を身にまとっていた。

彼はいつも最前列に座って、片手を机の上に静かに置き、じーーーーっと身動きもせずに先生の話に耳を傾けている。これは、目が見えないために先生のパワーポイントが見えず、話のみで内容を理解する必要があるためだと思う。また、ノートを取っても読み返せないので、ノートを取る代わりに、じーーーーっと先生の話を聞いているのだろう。

もの凄い集中力と、私の知らない努力がなされているのだろうなと思った。

この人は、人の気配というものを感じているのか、棒に頼らなくても人とぶつからない距離をとれるようだ。周りが配慮しているのも若干はあるだろうが、この人自身も調整しているだろうと思う。



彼の周りで起こる私の好きな光景がある。

それは、女の子たちが彼を取り囲んで、彼の手を引く様子だ。

きゃっきゃきゃっきゃと柔らかい笑い声を立てながら、女の子たちと、その男の子がいる。その女の子のうち二人が、男の子の腕をぎゅっと掴んでいる。

まるで、その光景は「ここだよ、おいで」と言っているようにも見える。段差があるときは、それを笑いながら伝えている感じでもある。

彼はいつもの慎重さを崩さないように手を引かれて、その周りをたくさんの女の子が、やっぱり柔らかな笑顔を絶やさずに囲んでいる。

二度ほどこのような光景を見た。また、別のときには、女の子が彼の腕をぎゅっと握って「ここの椅子が空いているから座りなよ」と言っていた。彼は座りたくないらしく、断ってずっと立っていた。

マレーシアでは柔らかな笑い声がよく聞こえ、よく目にする。

中でも私は、彼の周りで繰り広げられるこれらの光景が大好きだ。