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男と女と、その観察者。

ある立ち飲み屋で、親子ほど歳の離れた男と女が飲んでいた。そこに、ちょっと経験値の高そうなオジ様が二人入ってきた。

立ち飲み屋なので、この4人は同席した。最初、その4人は話さなかった。しかし、オジ様二人は、この男と女が気になるようで、チラチラと観察する。男と女は、ともに頬を緩め、談笑している。

そして、オジ様の一人が口火を切る。

「あなた達はお似合いですね」

男も女も嬉しそうに微笑む。

「いえいえ、上司と部下のようなものですよ」と女が言う。でも、オジ様たちは信じていないようだ。

この男と女が非常に気になったようで、二人の素性を明らかにしたいという感情がオジ様たちにはあるようだ。いろいろと質問をする。

オジ様は経験値が高く観察眼が鋭いことは、年齢からだけではなく、その風貌からも感じられた。ただ歳を重ねるだけでカンが鈍い人もいるが、このオジ様たちはそのようなタイプではなく、非常にカンが鋭い人たちであった。

「あなたは医者に見えますね」とオジ様は男に言った。ほう、たしかに医者に見えないことはない。男は見るからにインテリといった感じである。

「違いますよ、よく言われますがね」と男は笑って答えた。

「ほう、では、なんだろうか・・・どこかの大学の教授か何かでしょうか」

これはおもしろい。このオジ様たちは、この男と女を同じ研究室の教授と学生と見たようである。

「そうですね。まぁ最近は助教ではなく、准教授という名称を使いますがね」と、男はわざとらしく話を少しだけそらしつつ、ほのめかすような言い方をした。

このような言い方自体が少々怪しいものである。女は脇で微笑んでいる。

「二人は特別な関係に見えますね」

「そんなことはないですよ。お仕事のお付き合いです」と女は笑顔で答える。

「いや、二人はとってもお似合いだ。幸せになりますよ。」と言うあたり、二人の関係を疑っているようだ。

「幸せになってください。」とオジ様は言って、店を出ていった。男と女は笑顔でオジ様たちを見送った。

その後、男がこう言った。
「俺、よく教授に間違われるんだよ。こんな風貌だからね。まぁそこはテキトーに交わしたけどな」

いや、たぶん、それはバレてますよ、と私は密かに思ったものであった。