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異国人に挟まれて。

帰りの電車の中で、この書物を読んでいた。左隣の女性の視線を感じる。
「すみません。」と声をかけられる。
私は大変驚いて、お尻が座席からぴょんと飛び跳ねたような感じがした。

「驚かせてごめんなさい。」
「写真を撮らせていただけますか?」

残念ながら、私の顔じゃない。書籍の中身のことである。日本語が大変珍しいのであろう。アルファベットや漢字は著名だけれども、日本語は3種類の文字を使うので特殊なのかもしれない。

「どうぞ」と私は書籍を差し出した。

「君はどこから来たのか」
今度は右隣の人から声をかけられる。

「日本です」
「上から下に読むのか。非常に珍しいな」

縦書きなのが珍しいのであろう。現在ではインターネットで横文字で見ることも多いけれども、書物は縦書きである。いつも書物を持ち歩いているのでなかなか自分ではその特異性に気がつかない。

オジサンは楽しそうに話しだした。「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」と言い、すこぶる機嫌が良さそうである。

「自分で勉強したんだ」

「何の本だ」

「よくわからないけれど、たぶん哲学でしょうか」

「哲学にもいろいろとあるだろう。何の哲学だ」

私はタイトルを見たけれど、何とも説明がつかない。

 

「構造と力(Amazon CAPTCHA)」と書いてある。

「知人に勧められたので読んでいますが、難しくて説明がつきません」

「ははは〜そうか〜」

そう言って、左隣の女性まで会話に巻き込んでいった。どうやら彼女はアフガニスタンの人であるようだ。

周りの人が不思議そうにというか、少し同情を含んだ視線でこちらを眺めている。ただ、このオジサンがあまりに陽気なので、私は読書に没頭したい気持ちはあったけれども、冷たい表情をできなかった。

でも、私が徐々に読書に戻り始めると、オジサンは静かになり、目的地に着くと静かに降りていった。