夫とともに焼かれて死ぬ女たち。

Sati というインドの独特な風習がある。これは、夫が亡くなったときに、妻も一緒に焼き殺されるということである。
実は、この風習はインドの最大の宗教であるヒンドゥー教の教えとは矛盾している。ヒンドゥー教では人を殺してはならないとあるが、過去から受け継いできた風習なので、この風習が過去に行われていたようである。

Sati が行われている理由は、夫婦は身体は2つだが、魂は1つであるという考えによるらしい。だから、夫が死んだら、妻も一緒に死ぬ。

ただ、過去のインドでは2歳や3歳などで結婚することもあり、早くで夫を失くした場合は Sati が適用されない。

また、これは必ず行われるわけではなく、夫の家族が決めることらしい。夫じゃないのか?と私は非常に驚いたように言ったら、夫は死んでいるから決めようがないと言われた。遺書などという考えもないから出てきた言葉であろう。

この話から喚起された光景が頭のなかから消えない。

女性たちはどのような気持ちで焼かれるのだろうか。その瞬間を想像すると、凄まじい光景が脳裏に浮かぶ。

哀しみと涙。
それは、夫の死に対するものかもしれないし、自分の死に対するものかもしれない。

焼かれて肌がただれて、そして激しい涙をも焼かれてゆく。

あるいは、覚悟を決めたように、穏やかに死んでゆく。

このテーマについての絵があれば・・・みてみたい。
そう思いながら、胸のうちで、この光景を描きだす。

美しい。
と思う私は、現代人に批判されるのだろうか。

決して、この風習を肯定しているわけではない。むしろ人の命に他者の意図が介入することに関しては、死刑に加えて非常に慎重にならなくてはならない。

でも、なかには夫の死に非常に絶望して哀しみに暮れる人にとっては、夫と焼かれることは幸せなのかもしれない。

激しい感情が生まれたときに、わたしは美をかんじる。